AIは製品開発担当者の「第2の脳」に?
最新RAG技術による、製品開発データの高度活用

皆さんこんにちは。レスター)AI推進チームです

前回のブログ『膨大な技術情報や過去の設計データ…あなたは「情報収集」にどれだけ時間を使っていますか?』では、製品開発部門の皆様の「情報収集に要する時間の削減」という課題について考察しました。
製品開発部門に属する皆様にとって、共感いただける部分もあったのではないでしょうか。

さて、今回はその課題解決策のヒントとなるAI技術、特に最近話題の「RAG(ラグ)」というものが、製品開発業務をどう変える可能性があるのか、その可能性と留意すべきことについてお話しします。

AIが「賢いアシスタント」になる時代?

「AI」と聞くと、皆様はどのようなイメージをするでしょうか? 最近では、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiのようなAIチャットツールをイメージする人も多いと思います。
これらのAIチャットツールは、様々な用途へ汎用的に利用でき、非常に便利である一方で、自身の業務に活用するという観点だと、情報セキュリティや回答内容の専門性など、様々な懸念があることも事実です。

これらの懸念を踏まえると、製品開発の現場で今求められているのは、専門的な情報や社内に蓄積されたデータやノウハウをもとに、的確な答えやヒントをくれる「安心・安全なAIアシスタント」ではないでしょうか?

  • 「この新しい素材に関する研究データから、重要なポイントを整理して」
  • 「社内の過去の実験データで、この現象と関連ありそうなものをリストアップして」
  • 「過去の製品開発プロジェクトの中から、今回生じた問題点と類似した事例を教えて」

このような問いに対して、AIアシスタントを「第2の脳」として利用し、製品開発における情報収集や分析の時間を大幅に短縮する。このような時代は、実は既に訪れています。

注目度が高まる「RAG」の凄さは何か?

「安心・安全なAIアシスタント」を実現する上で、今注目されている技術の一つが「RAG(Retrieval Augmented Generation)」というものです。
RAGとは、データベースに格納された情報をもとに回答を生成するAI技術です。
具体的には、以下のようなプロセスで回答を生成します。

  1. ユーザーの指⽰(プロンプト)に基づき、データベースに格納した設計ドキュメントなど、信頼できる情報源から指⽰に関連する情報検索結果を取得
  2. ユーザーの指⽰(プロンプト)+取得した検索結果をLLM(⼤規模⾔語モデル)に⼊⼒
  3. LLMが回答結果を⽣成

汎用AIチャットボットは、インターネット上の膨大な情報で学習しているため、一般的な知識に富んでいます。
一方で特定の専門分野の最新情報や、社内に蓄積されたな情報は学習していないため、それらに間する回答を得ようとしても、ハルシネーション(事実とは異なる情報を生成すること)を起こすことがあります。
しかし、RAG技術を活用すれば、AIは「根拠のある社内情報に基づいて」答えてくれるようになり、以下のような製品開発が実現できます。

  1. 開発スピードの向上
    過去の設計書、実験データ、技術報告書、仕様書など、必要な情報を迅速に得る
  2. 設計品質の向上と手戻りの削減
    過去の類似製品の設計思想、採用した技術、発生した問題と解決策などを網羅的に把握する

先ほど、製品開発の現場で今求められているのは、専門的な情報や社内に蓄積されたデータ・ノウハウを基に的確な答えやヒントをくれる、「安心・安全なAIアシスタント」とお伝えしましたが、これを実現するAI技術が『RAG』といえます。

RAGの導入で留意すべきこと

ここまで、RAGが製品開発部門にもたらすポジティブな面をお話しましたが、本当に役立つものにするには以下のような留意点があります。

  • データの質と量
    AIの回答精度は、何を学習‧参照させるかにかかっています。社内の情報が整理されていなかったり、間違っていたりすると、AIも賢い答えは出せません。
    よって、まずはAIに読ませるための質の⾼い情報を準備する必要があります。
  • 機密情報の取り扱い
    特に社内の機密情報や、まだ公開していない研究データをAIに扱わせる場合、情報漏洩のリスクは絶対に避けなければなりません。自社のセキュリティ規定や生成AI活用ガイドラインを踏まえた環境整備が必要です。
  • 構築・運用の手間
    自社専用のRAG環境を構築し、安定運用と精度の維持・向上を行うには、AIやデータベースに関するある程度の専門知識や技術力が必要となる場合があります。
  • 最終的にはヒトの判断
    いくらAIが進化しても、最終的な判断や意思決定は人間が行うべきです。
    AIはあくまで「とても優秀なアシスタント」であることを常に意識することが重要です。

これらを踏まえると、RAGの導⼊は難しいと思われるかもしれませんが、ポイントを押さることで課題を解決することができます。

まとめと、次回のお楽しみ

今回は、製品開発の進め方を変える可能性を秘めたAI技術「RAG」について、そのメリットやデメリット、留意点などをお話ししました。
製品開発の中で、本当に価値のある情報を見つけ出し、それをイノベーションに繋げる。』 
RAGは、まさにそれを実現するための強力なツールになり得る技術です。
ただ、導入には準備や上記のような注意点があります。
次回のブログでは、これらの課題を解決し、RAGのメリットを最大限に引き出すための具体的な解決策とレスターがお手伝いできることについて、詳しく紹介いたします。
ぜひお楽しみにしてください。

更新履歴

  • 2025/06/26

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