皆さんこんにちは。レスター)AI推進チームです。
前回のブログ記事、「そのデータ、眠っていませんか?製造現場の価値を最大化する「データ活用」の重要性」そでは、多くの製造現場が直面する「データ活用の理想と現実」について触れ、データが「宝の山」であると認識しつつも、「取れない」「繋げられない」「活用する人がいない」という3つの課題によって、その価値が発揮されずにいるという内容をお伝えしました。
今回のブログでは、これらの課題を解決し、「眠っているデータ」を「利益を生む資産」に変えるための3つのステップについて解説していきます。
❚ ステップ1:目的の明確化 ― 「何のためにデータを取るのか?」を問い直す
データ活用プロジェクトが失敗する最も多い原因の一つが、「とりあえずデータを取ってみよう」という、目的が曖昧なままの見切り発車です。最新のIoTシステムを構築し、モダンなグラフで稼働状況を「見える化」したものの、それが具体的な改善活動に繋がらないというケースは非常に多いです。同じ状態に陥らないようにするには、どうすべきでしょうか?まず最初に行うべきは、「データを使って、どの業務の、どんな課題を解決したいのか」を突き詰めることです。
例1:品質改善が目的の場合
- どの工程で、どのような種類の不良が、どれくらいの頻度で発生しているのか?
- その不良が発生した瞬間の、設備データ(温度、圧力、振動)、材料ロット情報、作業者などを特定できるか?
- 目的: 不良発生の根本原因を特定し、歩留まりを改善する。
- 必要なデータ: 品質検査データと、製造条件データの紐付け。
例2:コスト削減が目的の場合
- 工場全体のエネルギーコストのうち、最も大きな割合を占めているのはどの設備か?
- 非稼働時間にも、電力を消費し続けている設備はないか?
- 目的: エネルギー消費の無駄を発見し、最適な運転制御を行う。
- 必要なデータ: 設備ごとのリアルタイムな電力消費量データ。
このように、「ビジネス上の課題」を起点に考えることで、本当に収集すべきデータが何であるかが自ずと明確になります。これが、データ活用における最も重要かつ、最初のステップです。
❚ ステップ2:全体設計 ― 「データ収集~活用」の青写真を描く
収集すべきデータが明確になったら、次はそれらをどうやって収集し活用するかという全体の青写真(アーキテクチャ)を描くステップに移ります。ここで多くの現場が直面するのが、「OT(Operational Technology:制御・運用技術)」と「IT(Information Technology:情報技術)」の壁です。OTの領域は、工場の生産設備やセンサーなど、物理的なモノを制御する技術が中心で、各メーカー独自のプロトコル(通信規約)が使われていることが多く、クローズドなネットワークで構成されています。ITの領域は、販売管理や生産管理システム、クラウドなど、情報を処理・管理する技術が中心で、オープンな標準技術がベースとなっています。これら二つの領域は、歴史的に異なる思想で発展してきたため、両者をスムーズに連携させるには専門的な知識が必要です。また、ここで重要なのは、場当たり的にセンサーを導入するのではなく、以下のようなプロセスを、拡張性やセキュリティを考慮した上で、俯瞰的に設計することです。

現場に適した環境で、古い設備からデータを取るため最適なセンサー・Edgeコンピューターを選定

収集したデータを集約し、分析しやすくする前処理方法やプログラムを設計

蓄積したデータを分析・活用するシステム(データ分析基盤やAI)を構築
この全体の青写真なしに、個別の施策を進めてしまうと、新たな「データの分断・分散」を生み出すことになりかねません。
❚ ステップ3:パートナー選定 ― 「誰と進めるか?」を見極める
目的を明確にし、全体の青写真を描いたとしても、センサーやデバイスといったハードウェア(OT)の知識、ネットワークやクラウド(IT)の知識、そしてデータ分析やAI(IT/AI)の知識など、実行に移すには多様な専門知識が求められます。
そこで重要になるのが、信頼できる外部パートナーとの連携です。
ここでのパートナーは、単に特定の製品や技術を販売するベンダーではありません。以下の3つの資質を兼ね備えた、最適なパートナーと連携する必要があります。
「OT」と「IT」の両方に精通している
製造現場特有の厳しい環境や、生産設備の特性を理解した上で、最適なセンサーを選定できるハードウェアの知見と、それらのデータを安全かつ効率的に集約・分析するためのクラウドやAIの技術力を合わせもっている
特定のメーカーに縛られない、中立的な提案力がある
自社の課題や環境、予算に応じて、国内外の幅広い選択肢の中から、本当に最適なデバイスやソフトウェアを組み合わせて提案する中立性がある
企画から運用まで、一気通貫で「伴走」してくれる
「システムを導入して終わり」ではなく、導入後の活用定着、そして継続的な改善まで、自社のチームの一員として共に汗を流す「伴走支援」の姿勢をもつ
❚ まとめ:眠れるデータを、未来の資産へ
2回にわたり、製造現場におけるデータ活用の現実と、その成功への道筋について探求してきました。製造現場に眠るデータは、間違いなく未来の価値創造の源泉です。しかし、その価値を解き放つためには、明確な目的意識、全体を俯瞰した設計、そして信頼できるパートナーとの連携が不可欠です。
今回共有した内容が、貴社のデータ活用、それによる新たな価値創造の第一歩となれば幸いです。
❚ レスターグループが提供する「設備データ収集~活用ソリューション」
❚ 更新履歴
2025/08/06